2011年11月2日水曜日

学生の“やったー!”という顔

きのうのできごと。私の話を聞いて理解したあと、得意そうな顔をして握手を求められた。

非常勤の勤務校でいわゆる会話の授業の後、学生2人が私のところに来た。中間テストを前にして、宿題の提出状況に不安があり、質問をしてきた。

宿題で会話練習をして、2人ペアになり、最後は宿題で会話を録音し、会話を文字化したものとともに提出することになっている。きのうは、教室で前回の宿題を返していた(文字化したものにいくつか注意点を書き返却)のだが、その2人の学生は録音したものは提出していたが、文字化の提出がなかったので返すものがなかった。私もうっかりしていて、その2人にそのことを伝えるのを忘れていた。

2人は、宿題を出したはずなのに、私から何も言われないので宿題が出ていないことになっているのではないかと不安になったらしい。今までの宿題の提出状況を書いたファイルを見ながら、未提出のところが黄色でマークされているので、「今から出してもいいか」と聞いてきた。

 ここまでのやりとりであるが、2人の学生は中国語で話し、私はほぼ日本語で返していたと思う。

 この2人、いつも教室で一番後ろの席にもう一人の友だちと3人で座っている。もう一人の友だちがいつも通訳役になり、教室での私の話を2人に伝えていたり、私に伝えたいことを変わって私に伝えたりしていた。私が彼らに話しかけると、2人はすぐもう一人の学生の方を向いて助けを求めていた。

 その2人が2人だけで来ると、今度はそのうちの1人が間をとりもつ役割になった。

「今から出してもいいか」と質問に対して、「録音したものは出しているし、もうフィードバックもしたし、今からWORDのファイル(文字化)を出しても意味がないよ。宿題を出さないと減点するけれど、録音したものを出しているから、そんなに大きい減点にはならないし。これからの宿題を全部遅れないで出せば成績も心配することはない。」と伝えた。これを伝えている間、ちょっとわかりにくい内容なので、中国語で話すか日本語で話すか迷ったが、言葉を選びながらとりあえず、最後まで日本語で話してみた。

 通訳役に転じた学生、自信のなさそうな顔をしながらももう1人の学生に中国語で説明。その後、私の方を向いて「あってるでしょ?」という顔をしたので、「うん、そうそう。」と返した。

 そして、手を差し出す。一瞬なんのことかわからなかったのだが、私も手を出し、握手。

 それを聞いていたもう1人の学生、私に日本語で質問しようとした。結局、言いたいことが言えなくて、中国語になってしまったが、でも、その学生はそれまで私に日本語で話しかけようとしたことがほとんどなく、あっても即座に切り替えていた。今回は、あれこれ言おうと試みていた。

 こうやって、「できた」と思ったり「自分もできるんじゃないか」と思って試したり、そういうことが感じられた一場面だった。

 私は、過去、学生に「日本語で話す」ということを極力強制しないできた。この学校と学習の位置づけが違う、ということもあるが、いろいろ考えてそうしてきた。ここは台湾なのだから中国語を話せ、日本語を勉強していて日本語の教師相手なのだから日本語を話せ、という考えが好きではなかった。

 今は、ある場面では、強制するところもある。そうすることへの迷いもある。学生にとってわかりやすい言い方をあれこれ選びながら、学生のわからないという顔に耐えつつ、日本語で話すことに疲れてしまうこともある。学生とのやりとりが中国語である程度できるようになった今、何が学生のためで、何が自分のためなのか、自分でもよくわからなくなっている。

 迷いは持ち続けたいとも思う。でも、今日は、よかったなと思えた。



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