2017年7月18日火曜日

【読みました】サラの鍵


 姉が貸してくれた「小泉今日子書評集」で紹介されていた本。史実を扱っているが小説である。
ナチスに占領されていたフランスで、ユダヤ人が大量にフランス警察に検挙されその後収容所に送られたヴェルディヴ事件。タイトルのサラは、この事件で検挙された、当時10歳の少女の名前。もう一人現代のパリに住むアメリカ人ジャーナリスト、ジュリアがこの小説の主人公。この二人のそれぞれのストーリーが行ったり来たりしながら小説は進んでいく。サラのストーリーとジュリアのストーリーでは使われているフォントが違うのでひと目でそれとわかるようになっている。
 本の帯からこの小説は2011年には映画化されていてジュリア役は私も見たことがある女優さんが演じているようだが、この小説も映画も知らなかった。シラク大統領が1995年にこの事件について正式に謝罪したということも、そもそもヴェルディヴ事件という名前すらも、知らなかった。
 主人公のジュリアは、上司からヴェルディヴ事件の取材を任された当初は、それがどんな事件なのか少ししか知らず「自分がいかに無知かをあらためて思い知らされた」と語る。フランス人が触れたがらない微妙な問題の取材を進めていくジュリア。フランス人の夫、夫の家族との関係にも変化が生まれてくる。
 印象的だったのは、幼い頃のサラを知る老人にジュリアが話を聞きに行った時の老人とジュリアのやりとり。老人はジュリアに問う。なぜ知りたいのか、この問題がなぜあなたにとって重要なのか、何のためか…、ジュリアが答えても答えても老人は執拗にジュリアに問い続ける。最後にジュリアは、自分が45歳になりながら何も知らなかったことをサラに謝りたいと言う。
 最後の答えは私の心にすっと入ってくるものではなかったが、一つの答えではあるのかなと思った。