2011年9月2日金曜日

ビジネス日本語の教材に最適?[本]

オトナ語の謎。 (新潮文庫)
オトナ語の謎。 (新潮文庫)糸井 重里,ほぼ日刊イトイ新聞


タイトルは半分冗談、半分本気。
いわゆる社会人が使う日本語の語彙や表現を取り上げて使われ方、意味を解説している。
例えば、
-マネージャー-
学生諸君のイメージと社会人のそれが大きく異なる言葉。社会におけるマネージャーは、レモンの輪切りを用意したりはしない。部下を持つ管理者をそう呼ぶのだ。言葉の上に「フロア」や「プロダクト」などをつけることもある。…
私も初めて社会での使われ方を知った時に、あまりの違いに驚いた記憶がある。

「この本の生まれ方。」に
…簡単にいえば、日本語ってものはおもしろいよなあ、というような軽い知的好奇心をテーマにした読み物だったのです。
…というわけで、ここにオトナの言語を学ぶ、世界で最初の教科書が誕生したのです。
とあるが、読み物としても面白く、また、日本語教科書的な説明もなされている。日本語教科書的な説明は、普通に読めば面白いところなのだろうが、私が読むと「そうそう。こういう説明って必要」と真面目に思う。
-よろしくお願いいたします-
オトナの世界における万物の始まりが「お世話になっております」だとしたら、世界が終わる日に交わされる挨拶はこの言葉。すべての終わりにオトナはこう添える。
学生からもらう簡単な手紙やメールで、よくある内容が依頼だが、最後に「ありがとうございます」と書いてあるものが多い。「謝謝」をそのまま日本語にしたと思えば普通なのだが、日本語で読んでいくとちょっとカチンと来るだろうなと思う。以前学生に「最後は、『ありがとうございます』ではなく、『よろしくお願いします』!」と半分冗談で言い切ったことがあるが、私の感覚もそんなにはずれてはいなかったらしい。
-とぶ-
オトナが「とぶ」というとき、状況によってその意味はおおむね3つあるという。
「ちょっと神戸へとんでもらえるか」
この場合は急な出張、強制的な移動を意味する。
「午後の会議とんだから、急に暇になったよ」
この場合は、なくなることを意味する。ちなみにデータがなくなることも「とぶ」である。
「高橋さん、○○支社にとばされたらしいよ」
この場合は左遷を意味する。…
こんな書き方が結構多いのだが、これが教科書的ですごい!と思わせる。同じ単語で状況によって意味が違うもの。まとめて説明してもらえるとわかりやすくすっきりする。
-クリアー-
…「問題をクリアーしました」だと問題を解決したことになるが、「問題をクリアーにしました」だと問題がなんなのかようやくわかりましたよい、ということになり、進行状況に雲泥の差があることを覚えておこう。…
これも、なるほど!だ。こういう一字だけの違いで意味が違うというのは学生にとっては重要。
-通す-
伝票や原稿など、オトナはさまざまなものを通すが、もっとも通すのは「話」や「企画」である。先方に通したり、うやむやで通したりするのである。…
こういう、他のどんな言葉とセットでよく使われるかという説明も多い。
-そういうことで-
…そんなとき「どういうことだ?」とか思ってはいけない。要するに「今日はこれで終わりです」という合図なのだから。
談話レベルの説明。
-目を通す-
書類などをザッと読む、ということ。しかし、ほんとにザッと読んだだけだと「目を通しておけと言っただろう!」などと怒られてしまうから注意。上司から「目を通しておけ」といわれた書類は熟読するくらいでちょうどいいのかもしれない。…
この説明も、ほお、だ。言葉を言葉通りに受け取ってはいけないことはよくある。でも「目を通すってどういう意味?」と聞かれて、ここまでの説明をしてくれる人はそういない。私も「ザッと読むって意味だよ」と説明して終わりだ。

本の最後には索引もついている。読みながら、「索引あるかな?」と思って後ろを見たら本当にあって、見事。

私自身はこの本を移動中の電車の中で読んでいて笑いがおさえられず、ふきだしたりにやついたりしていた。そんな面白おかしいものを目指しているのではないが、「こういう説明があれば学生にわかりやすいし、役に立つ」という解説方法で、なんというか…脱帽した。

この本、元々は、どなたかのブログで「そうなんですね」のあいづちについて書いてある、というのを読んで、読んでみようと手にした本。糸井重里は、別に深い理由もなくなんとなくあまり好きではなかった(今まですみません)のだが、読んでよかった。


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