2012年4月27日金曜日

インカ帝国とプロメテウスの罠

タイトルの2つは、今月初めに日本へ行った時に出会ったもの。「インカ帝国」は、国立博物館での「インカ帝国展」。「プロメテウスの罠」は、朝日新聞の連載が書籍化されたものだ。この全く関係のない2つなのだが、私は、この2つを見て、「時代は変わらないんだなあ」とつくづく感じた。(そんなこと当たり前、今さら何言ってるの、と思う人もいると思うが。)2つについての感想。
 まず、インカ帝国展。恥ずかしながら、私はインカ帝国についてほとんど知らず「かつて栄えた黄金ザクザクの夢の国」ぐらいにしか思っていなかった。友人にそのことを話したら「へ?」という顔をされたので、なぜそんな風に思っていたのか考えたところ、たぶん原因は山本鈴美香のマンガ「7つのエルドラド」。その中に、インカ帝国の黄金に通じるなんたら…みたいなのがあって、そのイメージをずっと持ち続けていたようだ。インカ帝国展を見たら、なんのことはない、スペインに征服されるまでは、インカ帝国が他の領地を征服しながら大きくなっていったのだ。その地域にある資源がほしいからそこを征服し、征服するとそこの住民を労働力として他の場所に配置し、物資の輸送をするために道を整備し…、なんて、どこぞで見たような話だ。さらに、スペインに征服されてからも、インカ帝国時代の王様たちは、一般住民と比べていい待遇を受け…なんというのも、なんか他でもあったような話。
 そして「プロメテウスの罠」。本の副題は「明かされなかった福島原発事故の真実」。読んだ最初の印象は「これは、本当に現代のことなのか」だった。第一章「防護服の男」は、放射線量が高いにもかかわらず、口止めされて住民に知らされなかった、というものだ。ガスマスクをつけた「白い防護服の男」が二人来て「放射性物質が拡散しているから危ないから逃げてくれ」という。しかし、政府からは 「直ちに影響を及ぼすものではない」的な発言が繰り返される。住民はどうしたらいいか戸惑う。その他にも、放射線量が高いのを知っていたが言えなかった、という話を後になって聞かされた、という話が出てくる。その後の章にも、放射線量を測るだけ測って住民には何も知らせない、知らせろと言っても教えられないと言われるという話がある。
 これを書きながら思い出したことが一つある。震災直後のAERAの表紙が騒ぎになった件だ。結構話題になったので私もネットで見たのだと思うが、防護服に防毒マスクをつけた人の顔がアップになったものだった。あの時、「恐怖心を煽るのはよくない」とか、「そこまでして売りたいか」のような批判が多かったが、あれはあれで報道としてはよかったのではないかと「プロメテウスの罠」を読んだ後では思う。たぶんあの時、あれを見てショックを受けるぐらいのことが実際に起こっていたようなのだから。
 一般的に「政府を信用しています」という人は少ないとは思うが、本の中にもあった「本当に危険なら町や警察から連絡があるはずだ。様子をみよう」ぐらいの気持ちは私にもあった。政府がやることなんて嘘もあるだろうとは思っているが、でも、ある程度信用している部分はある。それが、「こういうことも知らされないのか」というのはかなりの衝撃だった。甘いと言われればそうかも知れないが、私はそうだった。
 第二次世界大戦中、悪いことは報道されなかった、というのは、よく聞く話だ。そうなんだと思う。軍や政府関係者は、日本が敗戦することはわかっていて、それとなく家族に伝えていた、なんてことも聞く。そして、それを聞きながら、「昔の日本の態勢はそうなんだ。戦時中の人は気の毒だ。みんなが勝つと信じこまされていて」と思っていた。何のことはない、同じではないか。
 基本的に「国」がやることは変わらないのだ。歴史を学ぶのは今の「国」が何をしているかを知るためなのかもしれない。


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