2012年5月29日火曜日

電子教科書試作版の感想

友人から中国語電子教科書の試作版のアンケートに答えてほしいという依頼が来た。今日、実際に触ってみた感想。
 この電子教科書、修士論文の一貫として作成したもので、「コンテンツは事前に用意していたが、実際に電子版にしたのは2日ぐらいしかかけていませんので、そう思って評価してもらえると…」とのこと。単なるPDFにしたものと、電子教科書にしたものとの比較で、なかなか面白かった。
 PDF版の感想は、はっきり一言「紙のほうがいい」。図表等がメインならまだしも、文字が多いし、メモもしたいし、となるとあまり電子化されているメリットを感じない。荷物が少なくなることと、検索ができることぐらいだろうか。メモもできないことはないが、手書きの簡便さが勝ってしまうように思う。
 電子教科書版。まず、大きな利点は、最初の会話のダイアログの動画がそのページに組み込まれていて簡単に見ることができる。ページが見開きになっていて、片側に字幕なし、片側に字幕ありの動画が貼り付けられていた。それだけでもいいなと思った。本文の赤文字に触れるとその単語の訳が表示され、青文字に触れると文法解説が出てくる。単語は、自分でリストを作ることもできるらしい。
 練習問題もついていて、選択肢を選ぶものや、紙で書くのなら線でつなぐような問題をドラッグするようになっていた。目先の変わったものは単純に面白い。聴解練習も同じページで聞くことができて便利だ。
 この電子教科書、マックのフリーで電子書籍を作れるソフトで作成したとのことだったが、一番残念だったのが、本文に触れてその音声が出ないことだ。ページ全体に貼り付けることはできるのだが、文字一つ一つに貼り付けることはできないらしい。そのうちできるようになるとは思うが、早くできるようになってほしいものだ。
 作ろうかなと思う観点から見ると、つまらないことに多少の手間をかけないと、なんとなくつまらないものになってしまうかなと思った。例えば、カラーで写真や絵などを入れられるので、逆に、黒で文字ばかりだと見た目がつまらなく見える。写真やイラストなどの質も高くないと面白くないかもしれない。練習問題も「正誤」だけを知らせるのでなく、もうちょっとなんか言ってくれないかなと思ってしまう。パワーポイントに凝り過ぎたプレゼンテーションと同じような悩みを持つようになるかもしれない。
 2日でできたということだったが、日頃プリントを作っているのと同じような感覚で作れるようにならないかな、と思った。具体的にイメージしたのは、今担当しているクラスで作っている「読み物プリント」。素材の文章を用意し、難しそうな単語や文法項目に少し解説をつける。関係のある写真やイラストを少し載せる。作っているのはそんな簡単なものなのだが、それに、文章朗読の音声が入れられて、解説が文章末ではなく、それぞれの場所に入れられれば、便利だ。ほぼ総ルビにしているが、これも見たい時にみられる形になっているといいかも知れない。ただ、そんなものを作るのに、とても時間がかかるのでは、別に今の白黒プリントでいいと思ってしまう。
 基本的に電子書籍は面白そうだなと思っていたのだが、実際に触ってみて微妙な感じに思えた。

2012年5月27日日曜日

マイクロディベートをやった

「マイクロディベート」は、前にこのブログで書いた本の中で紹介されていたもの。実は今回は2回目で、結論から言うと、前回は失敗、今回は、まあよかったかな、と思えるクラス活動になった。

 前回やったときは、やっている間から、クラス中にいや~~な雰囲気が漂っていた。学生はなんとなく嫌な感じを抱きつつも、一所懸命やってくれていたように見えた。前回で、学生には申し訳ないが、みんながどこで嫌だと思うかもなんとなくわかったので、今回は前回の反省点を踏まえてやり方を少し変えてやってみた。
 この授業では、学年統一の自作プリント教材を使用しているのだが、前回のテーマは、その教材の中のある問題について。ある問題というのは、日本で実際に起こったできごとだが、「外国人お断り」を掲げている銭湯で、日本に帰化した人が銭湯に入浴を断られ、それが問題になったもの。ディベートの前にクラスで少し意見交換をした時に、銭湯のやりかたは「ひどい!最低!」という反対派と「しょうがないんじゃないかな」という擁護派がいたので、ディベートになるかなと思ってやってみた。まず、難しかったのが立論メモを書くところ。立論メモは、議論のポイントをあげて、それに対して賛成反対を書くのだが、これがなかなか難しい。メモの欄を埋めるのに一苦労していた。また、同じグループで、3回ディベートを繰り返すのだが、これが言う人は違うけれど、同じ話が3回も繰り返される感じで、飽きていたようだった。元々、あまり多様な論点が出ないようなテーマだったからかもしれないが。
 今回は、教材に議論のテーマが複数設定されていた。テーマは、以下についての是非を問うもの。
①小学校の英語教育必修化
②小学校の郷土言語教育必修化
③高校の第二外国語にベトナム語とインドネシア語を採用
④言語は教室(学校・塾)で勉強することが大切だという考え
⑤日本語学科の卒業資格にN1合格を採用
 教材の中に賛成と反対の理由をまとめるタスクがあったので、立論メモは今回は省略した。教材の中のタスクでは議論のポイントの設定はなかったが、前回、そこに時間をとられてしまったことの反省と、ポイントがなくてもそれなりにやってくれるのではないかという期待があった。
 ディベートの方法だが、同じテーマで3人で3回やるのはやめた。やったほうがいいとは思うのだが、どうしても学生は飽きてしまう。わりとみんなの論点が似通っていて、違った観点からの議論は期待できないから、しかたないかなと思う。実際、1回目をやったあとで、「このまま、前回みたいにやる?」と聞いたら、みんなから「えーーー」という声があがった。1回議論をしたら、テーマとメンバーを変えることにした。また、1回でメンバーもテーマも換えるので、2分の自由討論の時には、審判の人も話していいことにした。
 教室の中に3人ずつのグループを作った。27人でちょうど9グループができた。(遅刻してきた学生がいて、最初は26人しかおらず、審判なしのグループを作るか、と思っていた。うまく3人グループを作れないことがあると思うのだが、そういう時はどうしているのだろう?)3人の中でA、B、Cを決めてもらい、Aが賛成、Bが反対、Cが審判で、1つめのテーマを1ラウンド行った。1ラウンド終わった時点で、Cがその場に残り、AとBが席をずれる形式で、グループを変えた。A、B、Cの役割を変え、2つめのテーマで討論をした。授業時間は2時間なのだが、最初に賛成と反対の理由をまとめるタスクを行い、その後の討論でも移動が多かったので、全部で3つのテーマを終えた。
 些細なことなのだが、時間を私の携帯で測っていたが、前回と音を変え、ボリュームも最大にした。前回は、私が声をかけないと気づかない学生もいたが、今回は、携帯の音だけで、全体に聞こえるようになった。本当に些細なことだけれど、それでもなんとなく雰囲気的に違う気がした。
 全体を通して見て気づいたこと。立論は1分半、反駁は1分の時間があるのだが、どうしても時間があまってしまい、クラス全体がシーンとする。途中で、「理由の中心だけを言うのではなくて、例もあげてみて」と言ったら、少しはよくなったように思う。また、テーマによっても話しやすいものとそうでないものがあって、あまり時間があまらない時もある。
 普段は、話す活動の時に、みんなが立って教室の中を動きまわり相手を見つけて話す、という形式にしていることが多いのだが、そうすると、あまり話さない相手というのが出てくる。今回は、じっくり座って、1人と長く対するし、相手もランダムなのでまちまちだった。いつもはあまり話さない学生同士で盛り上がっているのが見られたのはよかった。また、話すのは苦手な学生は、ただ立っているだけで、積極的に相手を見つけようとせず、逃げていることもあるのだが、今回の場合は、絶対に話さなければいけない。それも時間が最大1分半与えられていると、かなりの長時間に思えるだろう。普段は逃げがちな学生も必死に頭をしぼって話していて、それもよかった。
 最後、時間が少しあったので、学生に「今日はどうだった?」と聞いた。嫌そうな顔をしていた学生も多数いたのだが、一人「面白かった!」と言ってくれた学生がいた。「でしょ!でしょ!」と言ったら、学生みんなに笑われたが、それで全体の雰囲気が、結論よかった、に傾いた。他の学生に聞いても「まあ、よかった」という答えになった。嫌だったところとして、「時間が長い」「面倒」という声があった。時間が長いというのは、立論1分半の時間のことなのだが、最初にやるときは、1分ぐらいでもいいかもしれないと思う。
 一つ難しいと思ったのが、学生がどんな話をしているのか、全体を見ているとなかなかわからない。話の展開のさせ方を聞いてみたいと思うと、1つのグループにい続けなければならないが、うまくいっていないところに声をかけようと思ったりしているとそれができない。1回、録音させてもらいたいな、とも思った。

2012年5月23日水曜日

急ぎの仕事は一番忙しい人に頼むといい

日経Bizアカデミーの記事-「忙しい」という人は頭の回転が悪くなる-を読んで思い出したこと。
(途中まで書いてその後忘れていたので、ちょっと古いが…)

以前、仕事でご一緒した方から教わったことがある。それがタイトルの「急ぎの仕事は一番忙しい人に頼むといい」だ。その方も「~と言われているんですよ」と教えてくださったので、そんなの常識と思う人もいるだろう。私はそんなこと考えたこともなかったので、最初聞いたときはえ?と思ったが、説明を聞いて納得した。
本当に忙しい人は、あとになっても時間ができるわけではないから、「ちょっと後にしよう」というわけにはいかない。だから、今忙しい中でもなんとか時間を作り出して、その頼まれた仕事をする。途中で入ってきた仕事だから、それまであったスケジュールになるべく影響が出ないように、さっさと頼まれた仕事を片づけ、自分のそれまでの仕事に戻る。だから、早くその急ぎの仕事をしてくれるというわけだ。とても納得した。
私はその話を聞いて以来「忙しい」と口にするのをためらうようになった。急ぎの仕事をさっさと片付けなければならないほど忙しかったことなどなかったからだ。忙しいと思いながら、実は全く忙しくなかったことに、その時改めて気がついた。
「後回し」は時間の無駄だと、本当に思う。たとえ忙しくても、いや忙しかったらなおさら、後回しにしていいことなどない。これもよく言われていることだが、「後回し」にすると思い出すのに時間がかかり、余計に時間を取られる。今すぐできることは、今すぐ片付けよう。ま、そんな生活をすると息が詰まることもあるので、たまには後回しにしても、それを「忙しいから」とは言うまい。

2012年5月7日月曜日

ネットでの交流-歌の製作者と翻訳者

現代は、こうやって交流することがあるんだ…と思った学生の例。
 先日、前に教えていた学生からメールが来た。好きな日本の歌の歌詞の翻訳を作ったから見てほしいとのこと。そのメールには、翻訳の文章はついておらず、「見ますよ」と返事をしたら、再びメールが来た。 メールには、日本語の元の歌詞と翻訳の歌詞が掲載されている学生のブログのURL、元の歌のビデオがあるYouTubeのURL、それに、歌の作者とのやりとりが記録されたURLが書いてあった。
 正直、色々な意味でかなり驚いた。
 まず、全てURLで送られてきたことに、単純に驚いた。作者とのやりとりは、Plurk pasteというものを使って記録されていて、そのURLだった。Plurkは、台湾では多く使われているtwitterのようなものであるが、それに何か長めの文章のリンクを貼る用途としてあるらしい。こんなものの存在も知らなかった。メールにだらだら引用されるよりも見やすくていいなと思った。
 前に教えていた学生、というのは、先学期、第二外国語のクラスを受講していた学生で、そのクラスは動詞の「て形」から始まり、動詞の○○形を学習し始めるレベル。歌詞の翻訳をするには相当難しいと思うのだが、それに挑戦したということにもびっくり。また、その歌のビデオも見たが(ちなみにこちら→コノナカ)、なかなか難解である。メールには、色々な友だちの助けを借りたと書いてあったが、やってみようと思うところがすごいと思う。
 一番驚いたのが作者とのやりとり。何より、聞いてみようと思うところがびっくり。私に送られてきたのは、歌詞の解釈に関するところのみなので、どういう経緯で作者と連絡をとるようになったのかはわからないが、こういうことできちゃうんだなあ、と思った。以前、何か日本の学校の取組みで、著作権の問題をクリアするために、学生が直接本人と連絡を取りOKをもらった、というようなのを読んだことがあるが、それと似ている。
 歌詞の解釈に関するやり取りだが、言葉の意味を説明するというのは、かなり高度な技術だと思う。それを、日本語と英語を交えて、相手に伝え、返事をもらっている。私が読んだところ、言い方に間違いなどはあるにはあるが、充分言いたいことはわかる内容だった。作者の側も英語を交え、わかりやすい解説だった。
 面白いと思ったのが、学生が作者への質問の最後に「お順調に」という挨拶を書いていたこと。そしてそれを相手も同じように使って返していたこと。「お順調に」は、中国語の翻訳的な感じがするが、なんとなく、言いたいことはわかるし、響き的にもいいな、と思う。作者もそう思って使ったのかどうかはわからないが、最後に「お順調に」と書かれていた。こうやって新しい表現が使われていくのも面白い。