2013年7月24日水曜日

日本に行けば日本語ができるようになる-ではない

 しごく当たり前のことで改めて言うことでもないかもしれないとも思うが。
 最近、Facebookに写真をアップしないようにしてるんだ
先日、日本にワーキングホリデーで滞在している卒業生と話をした。その学生の言葉。写真をアップすると、みんなから「いいなあ」と羨ましがるコメントが入る。また、その学生曰く、Facebookの投稿は自慢ととられることも多い。日常生活でいいなと思ったものを写真に収めアップしているだけなのに…。日本での生活は楽しいばかりではない。辛いことも多い。でも、友だちにはそんな苦労は伝わらず、いいなあ、日本にいれば日本語上手になるよね、と思われる。そんなことが積み重なり、モヤモヤした気持ちがたまったのだろう。なんかわかる気がした。
 日本にいれば日本語上手になる。そう思っている人は多い。そんなことはない、というのも結構知られていることだけれど、でも、「日本に行けば…」と思っている人もまだまだ多い。台湾の学生でも「こんなところで勉強しているより日本に行ったほうが早い」と言う学生もいる。そういう学生で、勉強に身が入らない人には必ず言う「台湾にいて日本語がすごく上手になる人もいる。日本に行ってもちっとも上手にならない人もいる。全て自分のがんばり次第。ここで頑張れない人は日本に行っても頑張れないことが多いよ。」
 先の卒業生曰く、「ワーキングホリデーで大阪を拠点としている人は、台湾人ばかりでつるんでいる」。語学留学した日本人が日本人ばかりで固まっていて何をしに留学に来たのか、という批判を思い出す。海外生活で同郷の友人は、情報を得る上でも、心理的なよりどころにするのでも、大事だ。しかし、その友人たちだけで生活してしまうと、自分の生活圏は広がらない。バランスを取るのが難しい。
 日本に留学したのに上手になったのは英語、というのもよく聞く話だ。日本語学校や留学生センターが生活の中心になると、そこで出会うのは外国人ばかり。日本人コミュニティとの接点を作るのは努力がいる。
 大学の授業を取ったとしても、そこで友だちを作るのはこれまた簡単ではない。「トイレでお弁当を食べる」が話題になったこともあるが、大学で友だちを作るのは、日本語の問題だけでなく容易ではないのだろう。「日本人は知り合いになるのは簡単だけれど、友だちになるのは難しい」となんとなく壁を感じたという学生の話もよく聞くことだ。
 コンビニでバイトしても最初のうちは目新しく感じるがそのうち、毎日が同じことの繰り返し。話すことも同じことばかりで自分の進歩が感じられない。レストランのバイトでも多少の違いはあれ、同じだろう。単調な仕事では、単調な言語使用の生活しかない。
 
 とにもかくにも、言葉を使う環境は自分で整えていかなければならない。ふくらみのある生活や仕事があってこそ、言語を使う機会も得られるし、進歩も感じられる。そのためには、それ相応の努力と忍耐が必要なのだ。
苦労してるんだね。ここに来るまで全然わからなかった。
台湾から遊びに来た友だちに言われた言葉だとその卒業生が語った。心に沁みる一言だったに違いない。アルバイト先が見つからなくて日本に来たのは失敗だったかもと思ったことがある。ようやく見つけたレストランのアルバイトは、一歩前進だったけれども物足りなさもあったのだろう。そしてこの間会った時には、ある会社で働いていると言っていた。話を聞いていると、同じ職場の人たちのいろんな裏話を知っていて、聞いていて面白かった。と同時に、頑張って人との関係を築いているのだなと感心した。
ちょっと考えれば、そんな簡単じゃないってすぐわかるのに。
この話題をしている間、ずっと悔しそうな表情をしていた。そうだね。ちょっと考えればわかるかも。でも、あまり考えないで言ってしまうのだ。「日本に行ったから日本語できるようになったんだね」って。だから根気よく周りに伝えていきたい。そして、自分だってちょっと考えればわかることをあまり考えもせず口にして、人をモヤモヤさせてしまっているはず。そんなことにも思いを馳せていきたい。

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