2013年7月23日火曜日

変わるきっかけ -いつどのように始めたか-

 先学期末のある大学での会話のテストのこと。会話テストは、いつも私と1対1で行なっているが、驚くほど前回までとパフォーマンスが違う学生が数人いた。聞くと、その誰もが、言語交換を始めたと言う。ほー、言語交換の威力はこうもあるのか、と最初は単純に思った。
 この学生たちは2年生で、今回伸びたなと感じた学生は、前はどちらかと言うと話すことが不得意だった学生だ。日本語を話す時は、なにかいつも自分の前にベールが一枚ある感じ。壁を作っているというほどではないが、どこかひいた感じで話していた。それが、テストという一応緊張する状況にもかかわらず、話す姿勢は前と全く違い前のめり。ベールがあるどころか、前へ前へと突き進んでいくように見えた。

 今回、言語交換を始めたという学生の一人に「もっと早く始めればよかったのに…」と言うと
前は自信がなかったから…
と言う答えが返ってきた。
 さらにこの言語交換について聞いてみると、学科の中のある活動がきっかけだということがわかった。その活動は大学院生が授業の一貫として始めたもので、私の理解している趣旨は「授業以外で楽しく日本語を使いながら勉強しようね」というものだ。その大学院生の指導の先生から頼まれ、その活動について授業の時に宣伝をしたものだった。今回伸びたなあと感じた学生たちは、その活動に参加し、その活動を通して出会った人と言語交換を始めたそうだ。

 なるほどね、そうなんだよね、と思った。

 ぐんと伸びたのは「言語交換を始めたから」と思える。確かにそうなのだけれども、「いつ、どのように始めたか」というのが大きく影響しているのではないか、と思う。この大学は日本人留学生も多く、言語交換を既に始めている学生は実は多い。1年生の授業でも、留学生とつながっていこうという取り組みはいくつかしているし、2年生の授業の中でもいくつか行なっている。授業以外にも学科の活動で実践場面はいくつも作られている。言語交換をしたいというだけなら、相手にはわりと困らない環境だ。でも、前は言語交換をしなかった。
 「自信がなかった」でも、たぶん、周りを見ていてあせりも感じていたのだろう。そこへ参加しやすそうな活動の案内があった。勇気を出してか、いやだったらやめればいいやという軽い気持ちでかわからないが、参加してみた。そこで楽しく過ごすことができ、出会いがあり、その流れで言語交換を始めた。今回は自分で一歩を踏み出してみたことが大きかったのではないかと思う。
 つまらないたとえかもしれないが、お見合いではなく偶然を装って二人を引き合わせる…というのとなんとなく似ているなと思った。誰とつきあうかは相手次第、相手がどんな人かが一番大事。でも、どう出会うかが、なんとなく影響してくる。形式的な、会うことが必然的な状況で会うよりも、自分の自然な流れの中で会うほうが、気持ちが前に向きやすい。
 言語交換も同じ。機会はある。でも、教師がお膳立てしたことと、ある程度自主性があるものとでは違う。それがその後の発展に大きく関わる。
 もちろん、お見合いが安心する人もいる。お見合いが嫌いな人は、何度もお見合いをすすめられたからこそ人との出会いを考え、自然な出会いに関わろうとするのかもしれない。自分にできることをやっていくしかない。

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