2013年2月22日金曜日

老人接客のちょっとした工夫

判子の入れ物は蓋をしないでお返しするんです。
銀行に行ったおり、ひょんなことから少し銀行員の方とお話をすることができた。住宅街の支店をあちこち回ってきたというその方は「高齢の方も多くて気を遣います」。
 ちょっとした物忘れというのは高齢の人にはつきもので、だからこそしていることが、最初の言葉。それを聞いたとたん「ああ、わかる」と思った。すんなり返して無意識にかばんに入れてしまっては、判子を返してもらったかどうかカバンに入れたかどうか記憶に残りにくい。カバンに入れる前に、判子の入れ物を閉じるという動作をするだけで記憶に残る確率は格段に増えると思う。
 通帳などもしまうところをよく見ていて、例えばかばんの中のポケットに入れたとか、何色のファイルにしまったなどを見ているそうだ。「通帳、忘れてきてないか?」のような問い合わせはしょっちゅうあるので、その時に「○色のファイルにしまっていらっしゃいましたよ」と答えると「あ、あった」と解決することもあったということだった。
 銀行での忘れ物は、「え!困ったどうしよう!」とうろたえるものが多い。判子はもちろんのこと、カードもあるだろうし、高齢ならメガネというのもあるだろう。通帳はさして大事ではないと思うが、うちの老人のように通帳=お金のように思っている人もいるので、重要だと思われることも多い。だからこそ、「忘れた」と言われたらそれ相応の対応をせざるを得ないし、「返してもらっていない」などと言われたら大きな問題に発展してしまう可能性もある。

 判子の入れ物は私も蓋をしないで返していただいた。老人対策ではあるのかもしれないけれど、ユニバーサルデザインがターゲット以外の人にも使いやすく好評だったものがあるのと同じように、誰にでも通じることなので顧客全員にそう接しているのだろう。
 その後別の銀行にもある手続きをしに行った。そこではうちの老人の用事だったので、私はとなりで見ていたのだが、その些細な対応の違いに「ああ、これもそうか」と思うことが多かった。最初の銀行をA銀行、後で行った銀行をB銀行にしておこう。
 まず、B銀行は手順がバラバラ。例えば、「判子はお持ちですか?」と言って客に判子を出させて置いてそれは放置し、紙に記入させ途中でまた判子を取り出させる。A銀行では、最初に判子を出させるがそれは必要な物の確認なので「あとで使います」と言って、はっきり客に見せたあとで、わかりやすいところに置く。それ以外にも、全体の手順が順番に並んでいるというよりも、「あ、そういえば」という感じで質問されるので、そのたびに作業が中断して集中力が途切れる。実際のうちの老人は書いている途中で話しかけられ、どこまで書いたかわからなくて、直前の作業に戻るのに手間取っていた。
 A銀行はこちらがやりやすい手助けがたくさんある。日付を書くときも、B銀行は「ここに今日の日付を書いてください」。A銀行は「2、0、1、3」と、一つひとつ数字を言ってくれる。別の資料から書き写すものがあるときは、A銀行は、書き写す部分に○を書いたり線を書いたりして見やすくしてくれる。「ここのこの部分を書いてください」だけだと、一度目を移動して元に戻すのが難しい。B銀行では、私がA銀行のやり方を見習い、写す元に線をひいて示した。

B銀行は外資系。何かの記事で外資系銀行はシルバー層の獲得に苦労しているというものを見た。シルバーを相手にしたいのならもう少しシルバー相手の接客を考えたほうがいいのになと思った。

0 件のコメント:

コメントを投稿