2012年1月22日日曜日

ピア・レスポンスをやってみようかな…という気になった!

跡部千絵美(2011) JFL環境のピア・レスポンスで日本人教師にできることとは-課題探究型アクション・リサーチによる作文授業の実践報告- 「日本語教育150号」 

色々忙しかった中で思わず一気に読んでしまった実践報告。
自分がこの著者と同じように、台湾で作文教育の今まさに真っ最中で、さらにピア・レスポンスに興味はありつつも、いまひとつ踏み込めないでいる、という状況…の私に、「これを読め!」と言わんばかりのタイトル、そして内容だった。
実は、もう随分前になるが、ピア・レスポンスを知る前に、似たようなことをやってみたことがあった。しかし、うまく行かず、数回でやめてしまった。
この実践報告、悩んだこと、失敗したこと、成功したこと等書いてあり、読みながら共感することが多かった。特に、学生は「文法の誤用訂正がほとんどで、内容・構成面へのコメントがほとんどなかった」ことは、実際、私も以前経験したことで、やめてしまった理由である。文法の誤用訂正がほとんどで、更に、訂正したほうが間違っていたり、訂正の必要がなかったり(どちらでも構わない)ということばかりで、意義を見いだせなかった。
私がこの実践報告を読んで「すごいなあ」と思ったところ。私の言葉で簡単にまとめてしまうと
内容・構成面へのコメントが少ないのは、そもそも学生がいい内容・構成についてわかっていない可能性がある。なので、内容・構成について考えさせるプリントを作成し、考える活動を行った。次の授業で、内容・構成面についてのピア・レスポンスを行なってくれることを期待していたが、学生には変化が見られず、相変わらず誤用訂正を行なっていた。先週のプリントに沿って話し合うように呼びかけたが、多くの学生は先週のプリントを持ってきていなかった。
脱力…すると思う、私ならここで。そしてあきらめる。でもここであきらめずピア・レスポンスを続けていったのは、本当に「すごい!」の一言だ。とにかくこの著者は、何か問題があると方法を考え、先行研究を読み、実践に改善を加え、1年ピア・レスポンスを続けられた。そのプロセス、試行錯誤等々、参考になるものばかりだ。

また、私が以前から思っていてこのブログにも書いたこと(「いい文章」-自分の価値観)についても書かれていた。
…これは大井(2002)が作文の文化差について述べていたことによるものである。大井(2002)は日本人大学生の英語作文が身近な話題になりがちで、アメリカ人大学生のような客観的で分析的な作文を書けないことを指摘していた。ここから、日本人の私が考える“いい作文”が、台湾人学生たちにとっても“いい作文”なのか疑問を持つようになった。北米でPRを実践した松本(1999)も、教師の考える“いい作文”と学生の考えるものが一致せず、学生の考え方を取り入れた。私も自分の意見を押し付けるべきではないと考えた。
作文の文化差について言及されているものはあったのか…。自分の勉強不足を反省。

来学期、ピア・レスポンスを取り入れようという気になっている。ただ、この論文にある実践だと作文のテーマ数が少なく、私が今やっている授業内容の半分もできない。ピア・レスポンスは学期を通して取り入れるものとして、それにより推敲を重ねて完成させるものと、現行の方法で書いてもらうものとの二本立てで行こうか、というのが今のところ考えられるものだ。今はまだもやもやと考えているだけだが、何よりも、あきらめず、根気強く、試行錯誤を重ねながら、やってみようと思っている。


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