2011年7月21日木曜日

研究会参加メモ 【アニメで日本語】 「第20回小出記念日本語教育研究会」

研究会に行ってからだいぶ日が経ってしまったが、前半の講演に続いて(【学習ゲーム】のエントリー)聞きに行ったパネルディスカッションについてメモしておきたい。

このパネルディスカッション、以前からアニメの活用について発表している矢崎満夫氏の手法「アニメで日本語」を取り入れた日本語学校での実践についてを紹介していた。

ここで語られていた「アニメで日本語」のポイントは、

アニメを学習事項のインプットに使うのではない。

学習事項のインプットに使うとは、例えば、「もののけ姫」の冒頭部分の映像を見て「あ、命令形が多い、これ使えるな」と思ったこととか、アニメではないがドラマで謝罪の例などを取り上げたような使い方だろう。

では、どういう使い方なのかと言うと、

みんなでアニメを見る「共通体験」をもとに、日本語によるコミュニケーション活動を行う。

このコミュニケーション活動については、ティーチング・ストラテジーとして、様々な活動例がある。研究会当日は、このティーチング・ストラテジーがプリントで配布された。(これは、矢崎氏の論文(2009、2010)にも紹介されており、2009の論文はネットで見ることができる。)

アニメを素材とした日本語学習活動『アニメで日本語』の開発―「アニマシオン」のティーチング・ストラテジーに着目して

発表の中で、人気がある活動(ティーチング・ストラテジー)だと言っていたのが「登場人物にインタビュー!」という活動。学生たちが登場人物が記者会見をするという設定にし、学生たちが登場人物役と記者役にわかれて質問のやりとりをする活動である。実際に活動を行っている映像も紹介されたが、登場人物役は、アニメの画像で作ったお面のようなものをつけ、役になりきって質問に答えるというものだ。

私が全体の発表を通して思ったのは、みんなでアニメを見て「共通のネタ」を持つことがポイントなのではないか、ということだ。プリントの中で紹介されていた「あなたはだれ?」という活動(論文では矢崎2010)

 教員がある登場人物役になり、カーテン等で顔が見えないようにして生徒の前に立つ。生徒はいろいろな質問をしながら、それがどの登場人物かを当てる。(例:生徒1「何歳ですか?」教師「18歳です。」生徒2「髪の毛の色は何ですか?」教師「白です」生徒3「あなたは○○ですか?」教師「はい、わたしは○○です」)

これは、アニメを見ないでも、有名人等の写真等を用意して、質問しながら当てるという活動はよくあるものだと思う。しかし、こういう活動で、誰をネタに使おうかと考えた時、みんながよく知っている人をさがすのは案外大変だし、バリエーションが限られてくる。それが、アニメを見た後だとみんなの共通認識ができるのでやりやすくなる。
実際の授業では毎回30分アニメを見て活動をしているということだったが、共通のネタづくりのために、授業時間の30分をさくかどうかというのは、考えがわかれるところだと思うが。

発表の時に、実際に授業を担当した小林氏と村松氏がしきりと「準備が大変だった」と言っていたが、質疑応答で「具体的に何が一番大変だったか」の質問への回答は「例えば、『登場人物にインタビュー!』では、小道具でアニメのキャラクターの正面の顔を大きくしたものを作るが、それを作るのが大変だった」と言っていた。動画の中から、うまく正面を大写しにしているものをさがしだし、それを画像化し、印刷するというのは、確かに地道でてまがかかることだろう。ただ、大変なところがこのような技術的なところであるなら、なんとかなるのではないかとも思えた。(私としては、視聴した部分と活動のマッチングに頭をひねらせる、のような考える部分が大変なのかと予想していた。)

研究会の後の懇親会で、他の先生と話をしていた時に「アニメじゃなくてドラマではだめなのか」という話をした。今考えると、「登場人物にインタビュー」のような架空のことをするのには、現実的に見えるドラマより、アニメのほうが架空の世界に無理なく入っていけるので活動もやりやすいのではないかと思う。

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