2011年2月16日水曜日

ChinesePod 上司が部下に注意するとき

ChinesePodは、私がよく聞いている中国語のPodcastだ。
その中で、「おお!!!」と思ったものがあった。

「おお!!」の中身であるが、
中高級(upper intermediate)の「getting tough on employees」の会話。上司がどのように部下に注意するか、という会話だ。
私が知っている台湾の日本人駐在員の不満で、「(仕事が)できる/終わらせられる、とずっと言っていたのに最後になってできないと言う。もう少し早く言ってくれれば対処の仕方があるのに…」というのがあるが、この会話もそれに関係していると思われる。
私が驚いたのは、ここまで突っ込んで聞かなければ、部下は「仕事上問題がある」と言ってくれないのか、ということだ。この会話で、上司は何度も「(この仕事を)終えられるか」と聞いているが、部下はそれに対して、簡単に言ってしまえば「できる」と答え、上司が更にしつこく問いただして初めて「実は…」と切り出している。
中国語では、部下の言い方の細かい部分で「何か問題があるな」と感じさせる部分があるのだが、例えば、これを日本語で会話した場合、そんな細かい言い回しができなければ、簡単に「できます」「頑張ります」と言ってしまい、それを聞いた上司は「できると言った」と思ってしまうのではないだろうか。

以下、会話の内容を聞き、日本語だったらこんな感じではないかというのを書いてみた。(中国語部分も私の聞き取りであるので、間違いがあるかも知れない。お金を払ったChinesePodのリスナーなら、ダイアログも見ることができるはず。)

 ChiensePod.com Upper-Intermediate : Getting Tough on Employees

上司: 我現在可以跟你談一談嗎?
(今、話ができるか?)
部下: 當然。
(もちろんです。)
上司: 最近你表現不太好。是不是工作上有什麽困難?
(最近、仕事の状況があまりよくないようだが、何か仕事で問題があるのか?)
部下: 沒有。我覺得可以應付
(いいえ。自分で対処できると思います。)
上司: 上星期你沒有按時完成報告,最近已經連續發生很多次了。是不是工作量太大了?
(先週、時間内に報告を出していないが、最近こういうことが続いている。仕事が多すぎるのではないか?)
部下: 還可以。老闆對不起,我最近有些不舒服,我會盡力的
(いえ、大丈夫です。すみません、最近ちょっと調子が悪かったので。以後頑張ります。)
上司: 你確定嗎?下星期我們有一個很重要的會議,你要準備很多資料,這個星期五能按時完成嗎
(本当に大丈夫か?来週、大事な会議があって、資料の準備がたくさんあるが、この金曜日までに終わらせられるか?)
部下:  應該沒問題
(大丈夫だと思います。)
上司: 我需要一個明確的答案,你到底能不能按時準備好?
(私は確かな答えがほしいんだ。本当に時間内にできるのか?)
部下: un…我一定會盡力的。老闆請放心。
(えっと、絶対頑張りますから、心配しないでください。)
上司: 我不需要聽盡力,我需要你清楚的告訴我,你能完成業務嗎?是不是有什麽困難,我能夠怎麼幫助你
(頑張るという言葉を聞きたいのではないんだ。はっきりとできるかどうかを聞いているんだ。何か問題があるのか?何か手助けが必要なことがあるか?)
部下: 老闆,其實有一個部分我不太會做,所以拖了很長時間。
(実は、ちょっと私があまりうまくできないところがあって、それで時間がかかっています。)
上司: 下次有在這種情況,你必須直時告訴我,我可以提供你需要的資源。就算你不能完成工作,我也擬願聽實話。不要聽模糊的回答。從現在開始你一定要注意這點,好嗎?
(今度こういうことがあった場合は、私にすぐはっきりと言うんだ。必要な手助けをするから。時間内にできないならば、 そう言ってほしい。あいまいな答えはいらない。今後このことに注意してくれ。)
部下: 我知道了。我會改進的、謝謝。
(わかりました。改善します。)

ChiensePod.comは、会話の後に解説があるのだが、今回は解説も興味深かったので、役立つと思われるところを書きだしてみた。

○このような状況の場合、上司は部下を尊重しつつ、しかし、言いたいこと、伝えたいことは、はっきりと言わなければならない。アンダーライン部分は、上司が部下にプレッシャーを与える表現方法。

○部下の答え方
・我覺得可以應付(青文字)
 この表現 から、既にこの部下は何か困難を感じていることが感じ取れる。「應付」という言葉には、簡単にはできないというニュアンスが含まれている。(I can cope ~)
我會盡力的(青文字)
 ここからも、この部下が何らかの問題を抱えていることがわかる。
應該沒問題(青文字)
これも不確定だということを察することができる。

○上星期你沒有按時完成報告,最近連續發生很多次了。(緑文字)
これを聞いた部下は、「上司に叱られている」ということを感じる。

○この上司はわりとよい上司である。上司によっては怖い威圧的な人もいるが、この会話の上司は「是不是工作量太大了?」のように部下への気づかいを示している。

○解説によると、「中国文化ではあいまいに話す」という。
(こういう場合は、あまり直接的には言わないということだろう。)

○上司の言葉「我需要一個明確的答案,你到底能不能按時準備好。」

「需要」でかなり強調されている。「到底」という言葉からは白黒はっきりさせたい、曖昧さはいらないという気持ちがわかる。

○上司の言葉「是不是有什麽困難,我能夠怎麼幫助你?」
部下に機会を与え、部下を気遣っていることを示す。こういう場合には、よい言い方。よく使われる。

○上司の言葉「從現在開始你一定要注意這點,好嗎?」
それまで少し厳しい口調になっていたが、最後にこう言うことによって、会話を和らげて終結させようとしている。


ChinesePod.comは上海の番組なので、それをそのまま台湾文脈に置き換えることはできないかもしれないが、それでも、かなりの参考にはなるだろう。また、これはあくまでも語学教材なので、本当の会話ではないのだが、語学教材は「あってもおかしくない」会話を作っている。だからこそ、びっくりする。
上司の「できるのか?」という質問に対して、部下は四回も「大丈夫」と答えている。四回だ。部下の「大丈夫」を聞いて怪しいなと思っても、二回は聞き返すかもしれないが、さすがに四回も「大丈夫」と言われたら、私だったら、それ以上追及しようとは思わない。
私が感じたのは、上司はかなりはっきりと明確に、何が必要か、何をしなければならないか、どうしてそうなのかということを言葉で具体的に話している。「それじゃだめ。」「次からは気をつけて」だけではいけないということだ。そして、「困っているなら力を貸す」というような相手への気づかいも忘れてはいけないし、プレッシャーを与えた会話の最後は、和やかに終結させたほうがよい。

普段ChinesePodの会話は、一度しか聞いていないのだが、これは何度も聞いている。何度聞いても、四回はありえない…と思ってしまう。

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