2013年5月5日日曜日

台湾の英語教育は実用的なの?

 きのう、江利川春雄氏のブログ記事‘「大学入試にTOEFL」の黒幕は経済同友会’を読んでいて、コメント欄の内容に少し??と感じた。中国、韓国、台湾は学校教育で英会話の習得に力を入れているというような内容なのだが、台湾での私の印象はそうではない。よく言われているのは日本と同じようなこと。受験のための勉強ばかりしていて、実用的な英語は身に付いていないというものだ。そして、実際に英語を話せる人が日本と比べて目立って多いかと言えば、そうではないというのが私の印象だ。
 台湾に来たばかりの頃、私も中国語ができずに第二外国語のクラスを担当して、英語を使って授業をしていた。という私もそんなに英語ができるわけではないが、第二外国語のそれも初心者クラスだったので、話すことと言ってもごく簡単なこと。学生のほうも何か用事があると英語で私に話していたが、その時の印象もそんなに英語が上手という感じは受けなかった。一応こちらも教師なので、学生のほうが英語ができると多少引け目を感じるところだが、そんなふうに感じることはなかった。ただ、教室に行って第一声「英語で話していい?」と聞いて英語で話し始めてもいやな顔をあまりせずに受け入れてくれたことはありがたかった。元々外国人教師のクラスを選んで取りに来ているので、受け入れる素地があったのかもしれない。
 日本語学科の授業で、いわゆる内容科目(日本語の習得だけを目的としたものではない科目)を受け持った時に、資料として英語を渡して読んでくる宿題を出したのだが、その時もそんなにすんなりいったわけではなかった。確かに私も日本よりは(というより、大学時代の自分よりは)、台湾の学生のほうが英語ができるんじゃないかと思っていたところはあるが、そうではないんだなと感じた覚えがある。
 そしてもう一つ。「英語で話す人に限って英語ができない」というのが、英語を使っていた時の印象。私が一言中国語を発すると、外国人であまり中国語ができないとわかり、そうすると相手は困った顔をしながら、英語で話そうとする。でも、そういう時に限って英語での会話は早々に終わる。買い物で値段ぐらいなら言ってくれるが、それ以上の内容になると中国語になる。
 以前勤めていた学校の事務方と話す時によくあったこと。私が何か用事があって行くと「あら、外国人が来ちゃった、どうしよう」と戸惑った顔をし、英語で話し始める。私がカタコトの中国語で話しかけたとしてもだ。そこまではまだいいが、学校の事務方と話す時は特に、街で買い物するのとは違い込み入った話になることが多い。そうすると、相手も英語でどうやって話したらいいかわからなくなり、途中から突然中国語になる。「そこまでの英語ぐらいだったら、私の中国語でわかるんですよ。その難しいところこそ、英語で話してほしいんだけど…」と思ったことが何度もあった。
 逆に、学科の先生たちは英語学科なので英語ができるが、私が中国語で話している限り中国語で応対してくれる。時折、私がわからない中国語があって「○☓□?」というと、英語で教えてくれた。

 もちろん、英語が話せる人もたくさんいる。でも、日本も同じなんじゃないかと思う。以前担当していた台湾と日本との学生の交流活動では、日本語を使ったり英語を使ったり、それぞれの得意分野で話していたのだが、日本の学生でも英語が上手だなと思う学生も多い。また、ここ数年、日本に帰ったときに、英語で何やら議論している人を何回も目にしたり、英語で道を聞かれてそれにそつなく答えている場面を見たり、築地で外国人客に商品の細かな説明をしている店員さんを見たりして、「英語できないっていうけど、そんなことないんじゃないの?」と思うことが多くなった。
 違うなと思うのは、外国留学が台湾のほうが高く評価されることだ。これは、古い日本の印象かもしれないが、日本では高いお金を出して外国に留学したとしても、そんなに評価されない。名前を知っている有名な大学を出たのならまだしも、アメリカの名前も知らない大学を出たぐらいだと、あまり評価されない。日本と台湾では大学の数が全然違うので一概に比較はできないが、台湾だと外国に留学したら、それなりに評価してもらえる。どこの大学を出たというよりも、外国留学したことが評価される。(台湾の大学でも、大学間格差はあるので、どこの大学を出たかという感覚は持っている)

 最後に、あんまりよくは知らないが、中国について。台湾で私の日本語クラスに来たごく少数の中国人、それも日本語でのことだが、会話はできない、という印象を受けた。文法はよく知っているし、書けば難しいことも書けるのだが、会話はさっぱり。会話以前に、書いたものを声に出して読んでもおぼつかない。中国で日本語を教えていた友人曰く、ものすごい詰め込み教育で、やはり書けるが話せない人が多い。ただ詰め込みが尋常ではなく、進度は早いし覚えろと言ったら必ず覚えてきてそれはすごい、ということだった。日本語がそうなら、英語もさして違いはないのでは、と思ってしまう。

 ということで、台湾や中国の英語教育と比べ、日本の英語は実用的な力が身についていない的なコメントには、そうなのかなあ????と思う。



2 件のコメント:

  1. 国民の二割ぐらいが英語を解すると聞いていたので、意外でした。

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  2. コメントありがとうございました。「二割」という数字と「英語を解する」というのがどのくらいのものかにもよりますね。これまた私の印象ですが、同じくらいでも日本では「できない」と言い、台湾では「できる」というかなとも思います。

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