2010年11月19日金曜日

とりあえず言ってみる「交渉社会」

 以前、日本から台湾に遊びに来た友人が言っていたこと。「台湾は交渉社会だと思った」。
いくつかエピソードがあるのだが、その一つが、レストランでのこと。レストランに来る前にデパ地下でお刺身を買ったので、行った先のレストランで
「できたらこれ、お店の冷蔵庫にいれておいてもらえませんか?」
と聞いたところ、その店はベジタリアンのお店なので、
「中に魚が入っているので悪いけどできません」
と断られた。
そのやりとりを見ていた友人は、「店の冷蔵庫に入れてくれるように聞く」のもびっくりだし、「店員もとりあえず店長に聞いてみる」のもびっくりだった、ということだ。

これは、今日、台湾人の友人から聞いた話。
日本人の友人と台湾の新幹線に乗ろうとした時のこと。駅構内の7-11で買い物をしていたら、新幹線の出発時間ギリギリになってしまい、慌ててホームに行こうとしたのだが、エレベーターがなかなか来ない。(荷物が大きかったのでエレベーターに乗ろうとしたらしい。)結局、ホームに着いたら乗ろうと思っていた新幹線は出発してしまって乗り遅れてしまった。
エレベーターには、別の中年男性も乗っていて、その人も友人たちと同じ新幹線に乗るはずだった。その男性が、乗り遅れた後に駅員をつかまえて言ったことには
「エレベーターがなかなか来なかったから私が乗るはずの新幹線に乗り遅れた。駅ではちゃんと係員が乗客を誘導するべきだ。私が乗り遅れたのは駅側の責任だ!」
簡単に言うと、こういう内容だったらしい。
結局、その男性の主張が通り、乗車券を次の列車に換えてもらうことができた。もちろん友人たちもいっしょに。
それを見ていた日本人の友人、
「乗り遅れたのを駅のせいにするなんて、有り得ない…。」

台湾人の友人は、
「台湾ではそういうのよくあるけど、日本ではあまりないですね。」
それを聞いた私は、
「でも、そういうの言っても、相手にだめって言われたら、わりとすんなり引っ込むことも多いよね。」
友人「そうですね。」

思えば、よくある気がする。私自身も学生から
「この授業がなければ午後授業がなくて自由な時間になるから、授業の時間を変更してほしい。」
みたいな要望をうけたことがある。
最初に聞いたときは、「おいおい、そんな理由でか!」と思ったものだった。何回かそういう要望を聞いていると、こっちも慣れてきて「疲れるからやだ」みたいな理由でも、相手は「じゃあ、いいです」と引っ込んでくれるので、気軽に聞き、気軽にお断りすることも多い。

そう、とりあえず、言ってみる。だめだったらあきらめる。そんな感じなんだと思う。

私が暮らしていた日本社会では、相手に絶対的な非があると思ったときにしか相手のことを責めないし、自分にどうしても、という理由がなければ要望を言ったりしない。そうなると、相手に聞いてもらえないと、激怒するか、困り果てるか、で、相手に対する不満が残ることが多い。

とりあえず言ってみる社会に慣れてしまうと、そのほうが楽な気がする。



(前述の新幹線での男性の交渉は「壓下去〈プレッシャーをかける〉」なのだそうだ。とりあえず、相手にプレッシャーをかけ、自分を優位に立たせておいて、それから交渉に臨むということらしい。)

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