2012年1月27日金曜日

聴解自律学習サポート5 期末報告から

学期末、元々テストをすると言っていたのだが、個人的にも色々あって、とてもそんな状態ではなくなってしまった。学生には申し訳ないがテストは行わず、学期末に聴解練習についての報告を行なってもらうことで、とりあえずの区切りをつけた。同じような聴解学習を行なっているK先生のクラスでは、学生にテストか報告かの希望を聞いたところ、2名がテストを希望したとのことだった。(クラスの規模はほぼ同じであるので、30名ぐらいの中からの2名だろう)どんな感じであったのか、今度お会いした時に聞いてみたいと思う。
中間試験後から始めた聴解自律学習サポートであるが、なかなか学生が始められなかったこともあり、実質1ヶ月少しぐらいだったと思う。途中、私自身もあまりサポートできなかったが、中間報告や期末報告を見ていて、学生がどこで迷ったりつまづいたりするかがわかってきた。ある程度予測可能であるし(ああ、そういうところって困るよね、わかるわかるという感じ)、全体にあてはまることでもあるので、対処法など準備できることは準備しておいて、学生に配布できるようにしたい。
以下、期末報告を見て気づいたことをまとめておく。(期末報告はほとんどの学生が中文で書いていたので、下は学生が書いた内容を私が理解し、まとめたもの。)

○計画通りにいかない。(期末試験が近づくと…と書いている学生多数)Facebookに時間を取られているという正直な反省も。
無理な計画はだいぶ現実的なものになっていったが、それでも「怠けて」やっていない、と書いている学生は多い。あまりストレスが出ないような方法、例えば、一応週に何回と決めるが、それとは別にトータル目標を設定してやったぶんだけうれしさを感じるような目標があってもよいと思う。私自身、定期的にやるのは苦手だが、多読の100万語はそういうストレスがなかったのでよかった。(twitterの@HAL_J さんのにも1000時間という目標が書いてあったような…。)

○単語を調べることで学習感がある。
「学習している感」があるかどうかを聞いたのだが、わからない単語を調べて新しい単語を知って「学習している感」がある、という学生が何人か。聴解自体で感じられるようにしたいのだが、それにはどうすればよいのか。(まあ、そうでなくてもいいのかもしれないけれど)

○「エリンが挑戦!日本語できます」
話す速度が速いという声が何人か。生リソースは自分には早い、教材だけれど教科書っぽくないものを学習したいという学生が聞いているのだと思うが、これでちょっと速いぐらいの感じで慣れてもらうのがよいのだろうか…。

○ドラマを聞いた学生

ドラマを見ている学生で、このまま次学期も続けたいという学生。順調ということだろう。これは少数派。ドラマをやっていて、難しいから教材に戻ってやりたい、という学生も。

○字幕を見てしまう…

わからないところを調べている人がいたが、わからないところを字幕を見てしまうと否定的に書いている学生がいた。私自身は、何度か聞いてわからないものは見ちゃったほうがいいと思う。何度聞いてもわからないものは、わかりようがないのだから。元々、聞いてわからない単語や言い回しを聞いて辞書で調べるのは高度な技だということを知らせたほうがいいかも。

○学習方法に迷う
中間報告でも似たようなことを書いていた学生。かなりできる学生なのだが、一歩越えた段階で、再び迷う時期なのだろう。(聴解のことではなく学習全般に対する悩みが書いてあった。自分は何を重視してやるべきなのか。)

○教師主導がいいなあ…
「テストがないと聞いてやらなくなった」「テストがないと面倒でやらない」「先生が宿題を設定してそれに沿ってやりたい」
こういう声にどう応えていくか…。

○「DVD教材 日本語でシャドーイング」
これを使っている学生が一人。以前、「何すればいいかわからない」と言っていて教材を薦めた学生だが(聴解自律学習サポート2 練習計画書の提出)、「ものすごく達成感がある」と書いていた。シャドーイングしないで聞いていたら何を言っているかわからなかったが、シャドーイングをするようになって段々わかるようになってきた。今も、早くて何を言っているかわからないことがあるが、慣れれば大丈夫!」と書いてあった。嬉しさが漂っていて、こちらも嬉しくなる。

来学期に向けて、また準備を始めなければ…。

2012年1月22日日曜日

ピア・レスポンスをやってみようかな…という気になった!

跡部千絵美(2011) JFL環境のピア・レスポンスで日本人教師にできることとは-課題探究型アクション・リサーチによる作文授業の実践報告- 「日本語教育150号」 

色々忙しかった中で思わず一気に読んでしまった実践報告。
自分がこの著者と同じように、台湾で作文教育の今まさに真っ最中で、さらにピア・レスポンスに興味はありつつも、いまひとつ踏み込めないでいる、という状況…の私に、「これを読め!」と言わんばかりのタイトル、そして内容だった。
実は、もう随分前になるが、ピア・レスポンスを知る前に、似たようなことをやってみたことがあった。しかし、うまく行かず、数回でやめてしまった。
この実践報告、悩んだこと、失敗したこと、成功したこと等書いてあり、読みながら共感することが多かった。特に、学生は「文法の誤用訂正がほとんどで、内容・構成面へのコメントがほとんどなかった」ことは、実際、私も以前経験したことで、やめてしまった理由である。文法の誤用訂正がほとんどで、更に、訂正したほうが間違っていたり、訂正の必要がなかったり(どちらでも構わない)ということばかりで、意義を見いだせなかった。
私がこの実践報告を読んで「すごいなあ」と思ったところ。私の言葉で簡単にまとめてしまうと
内容・構成面へのコメントが少ないのは、そもそも学生がいい内容・構成についてわかっていない可能性がある。なので、内容・構成について考えさせるプリントを作成し、考える活動を行った。次の授業で、内容・構成面についてのピア・レスポンスを行なってくれることを期待していたが、学生には変化が見られず、相変わらず誤用訂正を行なっていた。先週のプリントに沿って話し合うように呼びかけたが、多くの学生は先週のプリントを持ってきていなかった。
脱力…すると思う、私ならここで。そしてあきらめる。でもここであきらめずピア・レスポンスを続けていったのは、本当に「すごい!」の一言だ。とにかくこの著者は、何か問題があると方法を考え、先行研究を読み、実践に改善を加え、1年ピア・レスポンスを続けられた。そのプロセス、試行錯誤等々、参考になるものばかりだ。

また、私が以前から思っていてこのブログにも書いたこと(「いい文章」-自分の価値観)についても書かれていた。
…これは大井(2002)が作文の文化差について述べていたことによるものである。大井(2002)は日本人大学生の英語作文が身近な話題になりがちで、アメリカ人大学生のような客観的で分析的な作文を書けないことを指摘していた。ここから、日本人の私が考える“いい作文”が、台湾人学生たちにとっても“いい作文”なのか疑問を持つようになった。北米でPRを実践した松本(1999)も、教師の考える“いい作文”と学生の考えるものが一致せず、学生の考え方を取り入れた。私も自分の意見を押し付けるべきではないと考えた。
作文の文化差について言及されているものはあったのか…。自分の勉強不足を反省。

来学期、ピア・レスポンスを取り入れようという気になっている。ただ、この論文にある実践だと作文のテーマ数が少なく、私が今やっている授業内容の半分もできない。ピア・レスポンスは学期を通して取り入れるものとして、それにより推敲を重ねて完成させるものと、現行の方法で書いてもらうものとの二本立てで行こうか、というのが今のところ考えられるものだ。今はまだもやもやと考えているだけだが、何よりも、あきらめず、根気強く、試行錯誤を重ねながら、やってみようと思っている。


2012年1月15日日曜日

今どき(?)の音楽事情

学期末、会話のクラスで好きな音楽について紹介するというプレゼン練習を設けた。
 私が知らない曲ばかり、というのは予想していたことだったが、思った以上にそれぞれの音楽の好みが違って、今どきはこうなのか、と感じた。
 クラスの人数は30人弱。同じ曲や同じ歌手でダブった発表がないほうがいいなと思っていたが、特に学生には何も言わなかった。発表を聞いてみると、というよりそれ以前に発表原稿を一度提出してもらった時点でわかったことだが、同じ曲も、同じ歌手もいなかった。歌詞も中文、英語、台湾語、韓国語、日本語(順番に意味はない)と色々ある。発表の中で、少し音楽を聞いてもらう部分があったのだが、聞いてみると、曲の感じも、ゆったりとしたもの、バラード風、ロック風、アニメの主題歌とまたそれぞれ。一人、篠原涼子の「恋しさとせつなさと心強さと」を選んだ学生がいて、うわっ懐かしいと思った。
 発表は、時間の都合もあり一人2分30秒と決めていた。準備の時に、「30秒話して、2分音楽を流し続けるなんてのはだめだからね」と言ったら、どのくらいならいいのか、と聞いてきた学生がいた。学生全体に、「曲を流すのは15秒から長くても30秒程度、それ以上になったら聞いているほうが飽きるから」と言い、「えー」と言われたが、それぐらいでちょうどよかったと感じた。私は一応採点をしながらも、もっと聞きたいなあと思った曲をメモして、結構楽しんだ。

 期末の会話のテストは、学生との1対1で行なったのだが、音楽の話題もその中で触れた。話していて、いい機会だから聞いて確かめてみようと思って学生に聞いた。
「私は、お金を払って曲を買いたいけど、CDは荷物になるので、ダウンロードして買いたい。でも、台湾で、お金払った曲を買えるサイトが見つからない。何か知らない?」
 学生は私の「お金を払いたい」発言にびっくりしていたようだが、学生の中で知っている人はいなかった。
 一つだけ私が知っているのはKKBoxだが、オンラインで聞くものなので、iPodを使っている私には使えない。学生にもKKBoxをあげる人がいたが、iPodのことを話したら「そうですね」とのこと。
 ある学生いわく、お金を払ってまで買いたい人は、ダウンロードだけだと、もしPCが壊れた時に曲も聞けなくなるから、CDを買っておくのではないか、と言っていた。
 台湾の曲を買うにはやはりCDか…。